今年に入ってから半年かけて、ようやく自分のペースを取り戻しつつあります。この半年間、大袈裟にいうならば、私はまさに「空虚」とお友達になったような気持ちでいました。
その理由とは、たった3ヶ月間だけしたお仕事のせいです。
短期パートとはいえ、20年ぶりのお仕事に張り切りすぎたか、月曜から金曜までの週5日間、朝9時から夕方までフルタイムで、そして時には休日出勤までして、どっぷりと働くということに時間を費やしてきました。
専業主婦とは違った世界は、別の意味で魑魅魍魎蠢く別世界で、そんなことも新鮮に感じるほど「働く」ということに夢中になっていました。
その間、ライフワークであった奥様ランチもショッピングにもほとんど出向くこともありませんでした。
朝は早くからいつもの家事をやり、子供を送り出した後に自分も出勤。そして帰宅すればまた家事をしてそのままバタンキューという生活でした。
本当なら疲弊しきっているはずが、何故かお肌の調子もよく髪も艶々。体調もすこぶるよく、あれほど苦しんでいた五十肩もすっかり治ってしまいました。
私の更年期障害は何処に⁉︎ というほどに、心身ともに元気になったのでした。
しかしそんな日々も終わり、また元の専業主婦に戻った時、なにやら胸にポカリと穴が空いたような気持ちになったのです。
これは想定外のことでした。専業主婦としての生活は20年以上にも及び、かたや短期パートはたったの3ヶ月です。自分の気持ちにそれほどの影響を与えるとは考えもしなかったのです。
自分の中に生まれた「空虚」を抱えながら、それを払拭しようとランチ会に精を出そう!と試みましたが、なかなかその穴が埋まることはありませんでした。
そんな気持ちのモヤモヤを、兼業主婦のお友達にポロリと話した時のことです。
「その3ヶ月間は、自分のために生きていた時間だったのね」
そんなことを言われたのです。
言われてみれば、その時の私は自分の都合を最優先に生きていたように思います。
家族とスケジュールをすり合わせる時も、まず仕事ありきで都合が合わなければ不参加、休日出勤したければ家事を家族に任せて仕事へでかけたり、帰りが遅くなれば先に食事は済ませておいてと、自分の事を最優先にしていました。
専業主婦として生活していると、家事や育児が中心となり、空いた時間で好きなことをするという一見恵まれた環境にあります。
とりわけ子供がある程度大きくなった私のような主婦は、朝から夕方まで自分の好きなように予定を組み立てることができます。
このように家族の都合に考慮しながらちょこちょこと一日の隙間時間に自分の時間を作るのと、何はともあれ自分優先で生活するのとではまったく違います。
時間を忘れて熱中できる趣味があるとか、帰宅時間を気にせずに仕事や遊びに全力投球するなど、とにかく自分の時間を自分のために使い、余裕がある時は家族のために使う。
つまり世の中のお父さん達のように、仕事を思う存分やり、帰りは飲みに行ったりした上で、早く帰宅した日や週末に家族サービスをするといった具合です。
主婦にはそんな生活はできません。もちろんバリバリのキャリアウーマンなどの中には夫や子供がいてもそんな生活をしている人もいるでしょう。しかし世の中のほとんどの主婦は、家族の都合を考えた生活をしているのです。
専業主婦は家族のために生活を整えるのがメインのお仕事となりますから、自分の都合で家事育児を疎かにすることは、義務を放棄しているようなもの。
お友達の専業主婦は「家事育児をやらなければ家庭において私の存在意義はないわ」とまで言った人もいます。
私はそこまでは思いませんが、基本的に専業主婦は家族のために立働くものだと思ってきました。
「自分の時間」を生きる前に「家族との時間」を生きるということです。
長い間、そんな生活を当たり前として暮らしていると、なんの疑問も持たなくなります。
私も20年の専業主婦生活してきた中で、「自分の時間を生きる」ということなど考えたこともありませんでした。
たとえばある土曜の一日、外国人夫と私がそれぞれどう過ごしているかを例にとってみるとわかります。
朝 5時
[私]土曜といえど高校生の娘は学校があるので、朝食などを用意したり、洗濯機を回したりとできる家事を始めます。
[夫]趣味のために遠方へ行くと朝一で外出。
7時半
[私]子供が出かけ、一人になったところで掃除にアイロン掛けといった家事にとりかかります。
[夫]能天気にも「ここにいまーす!」と写メなどを送りつけてくる。
9時
[私]ウォーキングやお買い物にでかけます。
[夫]どこぞで趣味に没頭。
11時
[私]ウォーキング帰りにスーパーで買い物を済ませて帰宅すると、今度は帰宅する娘のため昼食の準備です。
[夫]どこぞで一人ランチをしているか、お友達とランチ。まだ外で遊んでいます。
13時
[私]娘に昼食をとらせ、片付けを終えるとひと段落。
ここから自分の時間です。本を読んだりブログを書いたりウトウトしたり。
[夫]まだ外出る遊んでいます。
16時
[私]洗濯物の片付けをしたり、家事をちらほらやった後、晩御飯の準備を始めます。
[夫]まだ趣味を楽しんだり、お友達と会ったりしています。
18時
[私]食卓を整え晩御飯。
[夫]ようやく帰宅し、整えられた食卓に座り家族と晩御飯を食べます。
20時
[私]晩御飯の片付けを終えなど。あとは自由時間。お風呂に入ったり、自分のお世話時間。
[夫]私の機嫌により片付けを手伝ったり知らん顔したり。その後、お友達とお茶を飲みに再度外出。
22時
[私]就寝
[夫]帰宅するもパソコンを開きなにやら遅くまでやっている様子。
翌朝(日曜)
[私]いつも通り5時前に起床。
[夫]用事があれば外出。なければ昼まで寝ています。
以上、週末の様子ですが、平日も私の生活は大して変わりません。
夫は仕事ををしている時以外は全て自分の自由時間です。
こんな生活を不満に思うことなく、むしろ好きにさせて頂いてありがたい!とまで思ってきました。
今は子供も大きくなったので好きにできる時間もありますが、子供が小さな頃はもっと家族のために費やす時間は多かったはずです。
こうしてみると、主婦とは一日のお休みもないのですね。
これまでそんな事を特別不満にも思わなかったのが不思議です。
しかし、私が「自分のため」に生きていた間、家族にとっては不便な生活の連続だったといいます。
家事だけでなく、普段私がしていた数々の雑用をみんな自分で引き受けなければならなくなったからです。
普段は私に任せっぱなしだったことも、夫は仕事の合間にやらざるを得なくなり、子供達もこれまではお手伝い程度だった家事を少なからず担うことになったりと、よく不満の声が出なかったものだと思います。
いま、また元のように専業主婦に戻りましたが、一番喜んだのは家族です。
今は奥さんを専業主婦にしたくないという男性が多いようですが、我が家は私が家にいた方が便利だと感じるのでしょう。
また仕事をしてもいいかも?
などと私が少しでも口にすると、
「いやいや、しばらくはのんびりして下さい」とまるで私を思いやるが如く、しかし実は自分のためにそんな言葉を吐くのです。
まだ学生の次女も、どちらかと言えばやっぱり家にいてくれる方がいい。そう言います。
私が外で仕事をするということは、家族にとってハッピーなことではないということです。
つまり専業主婦が「自分の時間を生きる」ことは、家族にとって必ずしも幸せではないということです。
だからと言って、自分の幸せをおざなりにするのもどうなの?と考えると、誰ににとっても100%満足のいく形などないのでは?と思えてきます。
最近ネットで「子供より自分が大切と悩む母親」という記事を読みました。
自分を最優先するなら子供なんて産むな!
母親でも自分のために生きるべき!
など様々な意見があるようです。
その家庭によって事情は様々でしょうが、家庭において主婦、とくに専業主婦の場合、自分を一番に考えて生活することは、つまり家族にとってはあまりハッピーなことではないということです。
自分よりも家族!そう思える人でなければ、専業主婦でいるのは辛いこととなるでしょう。
私もこの半年間、そんな事を考えてはモヤモヤとしていましたが、ようやく元の専業主婦生活が当たり前と受け止められるようになってきました。
「100%自分時間」を生きるのは、もう少し先送りにしてもいいかなと観念しました(笑)