「美味しいものは油と糖でできている」
一昔前、CMでそんなキャッチコピーがありました。
これを聞いたとき、私は大きく頷いたものです。糖質の多い炭水化物と油の組み合わせは、そのカロリーと比例するように、それはそれは美味しく感じるものです。
大きなバターの塊をのせたホクホクに茹でたジャガイモ。
しっかりと油の旨味を蓄えた揚げ物と白米。
カリカリっと揚がったポテトチップス
その姿が隠れるほどたっぷりマヨネーズのかかったお好み焼き
生地がふやけるほどに溶けたバターとシロップのかかったパンケーキ
そしてハンバーガーのお供、山盛りフライドポテト
。。。
想像すれば恐ろしいほどのカロリーを誇る美味しそうなものが次々と思い浮かびます。
そんな油と糖でできた美味しいものですが、最近私がハマってしまったのがコンビニのハッシュドポテトです。
コンビニに行くと、レジの横にある保温ケースの中には様々なものが並んでいます。
これを見ると、ついつい
「あっ!アメリカンドックも一つ下さい」
などと言ってしまう人もいるのではないでしょうか。
我が家の子供達は学校帰りにいつもそんな買い食いをしているそうです(近所のコンビニのお兄さんが密かにおしえてくれました)。
「歩きながら食べるなど、お行儀が悪いからやめなさい!」
一応母親らしく気取って言ってはいますが、実は若い頃は私もよくやっていました。
昔、イギリスで暮らしていた時はよく歩きながらものを食べたものです。
街の中でも電車の中でも、多くの人がチョコレートやクッキー、時にハンバーガーなどを食べていたため、それがお行儀の悪いことという意識が薄らいでいたのでしょう。
郷にいれば郷に従えばとばかりに、私もモグモグやりながら歩いていたのです。
しかし、日本に帰国してみると、そんな人はほとんど見かけません。この社会ではものを食べながら歩くのは、やはりお行儀の悪いことなのだわ!
そう気づいて以来、すっかり食べながら歩くという習慣は(可能な限り)封印されることとなったのでした。
ところが少し前のこと、パート仕事の帰りにコンビニへ寄って買い物をしたところ、なにがしのキャンペーンだかなにかで、お買い物をした人にハッシュドポテトをプレゼントしています!と、おもむろに小さな袋に入ったアツアツのハッシュドポテトを渡されたのでした。
「熱いものは熱いうちに」
これは原則です。家まではまだ5分以上歩かねばなりません。
その間に冷めてしまうのではないかしら⁉︎
そんな思いと、仕事での疲れと空腹が、
「今すぐ食べておしまい!」
そう囁きます。
食べ物に関してはいとも簡単に理性が崩れる私です。
心の声に従って、そのハッシュドポテトを食べることにしました。
その小さな白い袋の中央部には、点々と切り取り線がついています。そこから袋を切ると半身だけハッシュドポテトが顔を出しました。
「すごいわ!まるで歩きながら食べることを前提に作られたみたい!」
いたく感動しながら一口パクリと頬張ると、アツアツ、カリカリのポテトが油の旨味と溶け合って、なんとも言えぬ美味しさ。ちょっと強めに効いた塩も疲れた身体に染み入ります。
「コンビニだと侮っていたけれど、これは美味しいわ。。。」
以来、私は仕事帰りにコンビニへ寄るたび、まるでパブロフの犬が如く、
仕事帰り+コンビニ+ハッシュドポテト
そんな図式が無意識のうちに私の口を開かせるようになりました。
「ハッシュドポテト、一つ下さい ‼︎」
この日本で50を過ぎた女がものを食べながら歩くなんて。。。
お行儀が悪いわよね。。。
そう思う一方で、
誰に迷惑をかけるでもなし、食べたいなら食べたらいいのよ!
そんな相反する二つの気持ちに揺れながらも、仕事帰りにはついつい「ハッシュドポテト一つ下さい!」と言ってしまうのです。
そんなこんなで、すでにいくつものハッシュドポテトを歩きながら食べました。
それは今後もしばらく続くでしょう。
ちなみに同年輩の仕事仲間の女性は、毎日コンビニの焼鳥を食べながら帰るそうです。一本だけ買って、それをワシワシと食べながら歩くといいます。
その姿を想像するとあまりにもおかしくて、それに比べればハッシュドポテトなどかわいいものだわ!と思ったのでした(笑)