8月の下旬でしたが、吹く風は涼やかで、お天気もすごぶるよく、とても気持ちのいい山の朝です。
長野駅を朝7時に出発し、戸隠高原フリーきっぷで一気に奥社入口まできました。
ここからいよいよ戸隠神社、奥社へ!
そういきたいところですが、ここで焦ってはいけません。まずはバスを降りたらトイレです!
これから山の中へ分け入ろうというのですから、次にトイレへ行けるのはいつかわかりません。
バス停のすぐそばに、ちゃんとトイレがあります。
準備万端整ったら、いよいよ奥社まで片道約2キロの旅です。
早朝であったせいか、人影はほとんどありません。
未知なる領域への侵入にワクワクしながら少し行くと、大きくて立派な鳥居が姿を現しました。
ここから、なんとなく空気が変わるのを感じたのは気のせいでしょうか?
歩いていると次第に車の往来の音が遠ざかり、サワサワとした木々の立てる音だけの世界となります。
「く、くま。。。」
思いもよらず、初っ端からこのような看板を見て、これからどんなに山の奥深くまで分け入ることになるのか?
いきなり心配になってきました。。。
ウォーキングで鍛えているとはいえ、山歩きはほとんど経験がありません。ましてや熊って。。。
それでも、自然の中に身を置くという非日常が新鮮で、歩みを進めるごとにいい気分になっていきました。
私って、実はアウトドアに向いてるのかも〜などと、鼻歌などを歌いながら15分ほど歩いたでしょうか、いよいよ前方に朱塗りの門が見えてきました。
随神門と杉並木
ここからは神域となります。悪いものが入ってくるのを防ぐための門です。
随神門の朱色と自然の緑のコントラストは、まさに「映え」する美しさです。
ここまでくると、すっかり下界から遮断された世界に感じられます。
長野県の史跡、天然記念物である樹齢400年を越えるというクマスギの並木道が500メートルに渡りつづいていきます。
ほとんど人のいないこの神秘の中で、静かにこれからの人生をどう生きるか?
自分と向き合ってみるわ。。。
などと、ちょっと格好いいことを考えてみたものの、不思議と頭がスッキリと空っぽになるのです。これはどうしたことか⁉︎ まさに無の境地です!
普段、邪念に満ち満ちている私の心の中。お友達からは「座禅にでも行きましょう」と誘われたり、「自分でメディテーション(瞑想)するといいわよ!」などとアドバイスを頂きますが、自分ではできそうにないわ。。。というくらい難しいことに思えていました。
しかし、どうでしょう!
自然美に圧倒されたのか、心は清々しくも無になっていたのでした。
延々と杉並木はつづいています。
自然の織りなす芸術です。杉の木がそびえ立つ景色も壮観ですが、足元もなかなか面白いものです。
2010年に放送されたJR東日本『大人の休日倶楽部』の撮影地となった戸隠神社ですが、その際に吉永小百合さんが中へ入ったため、その後真似をする人が増えたとか。
杉の木が傷むのを防ぐために、人が入れないように今はこうして紙垂がかけられています。
どれほど歩き続けたでしょうか?
行けども行けどもなかなか先が見えません。
人生も同じ、先が見えないというのは不安なものです。それでも目的があれば歩き続けられるものです。
そうこうするうち、平坦だった道が急勾配の石段に変わります。
この石段、270段あるそうですが、それよりも長く感じました。行けども行けども終わりが見えません。
息切れがします。滴る汗を拭いながらも登り続けます。
日頃のウォーキングの成果を遺憾なく発揮する時です!
まだまだ50代!行けるぞ自分!
目的に向かって突き進むのだ!
そう叱咤激励しながらヒーヒー言いながら歩きます。
すると、ようやく何か建物のようなものが見えてきました。
あれぞ目的の奥社です!
随神門から途中で景色の写真などを撮りながらゆっくりきたので、30分ほどかかりました。
手水舎の冷たい水でお清めしてから、参拝へ向かいます。
奥社(おくしゃ)
奥社は戸隠神社の御本社。御祭神は天手力雄位の(あめのたぢからおのみこと)で、開運、心願成就、五穀豊穣、スポーツ必勝などに御神徳があるとされています。
道中、人の姿はチラホラたまに見る程度でしたが、こちらにくると数十人の人が参拝していました。
順番を待ち、手を合わせ、しっかり参拝できました。
そこから左手に行くと、九頭龍社です。
九頭龍社(くずりゅうしゃ)
御祭神は九頭龍大神様(くずりゅうのおおかみ)で、水を司る雨乞いの神様です。他にも縁結び、心願成就、そして虫歯の神といった珍しい神様がいます。
とても小さく質素なせいか、外国人観光客のカップルは分からなかった様子。近くにいた方が指差すと、「あら?」といった表情(笑)
それにしても、よくぞ遠くから来たものですね。長野のこんな山の上まで訪れるとは、よほど興味があるのかもしれません。ちなみにそのカップルはフランス語を話していました。日本語はわからないようですが、母国語で読めるパンフレットやインターネットサイトなどはあるのでしょうか?
余計なお世話ながら、ちょっと気になりました。
さて、そんな他人の心配をしながらも、しっかりと参拝させて頂きました。
私、虫歯はありませんが、何故か戸隠神社五社の中で、こちらの九頭龍社が一番心惹かれる場所でした。
それは訪れる前からで、「ここだけは参拝したい」と強く思っていたのです。
そんな九頭龍社で無事に参拝を済ませだ後は授与所へ。
9時少し前だったので、御朱印帳を抱えた人の後ろに並び、窓口が開くまで少しだけ待ちました。
祈祷おみくじ
ここでは御守りを買ったり、おみくじや御朱印をいただくことができます。
この時も、御朱印を頂こうと数人の方が並んでいました。私の周りにはほとんどいないのでピンとこなかったのですが、やはりこういうところを訪れると昨今の御朱印ブームを実感しますね。
私は御朱印集めの趣味はないので、こちらでの目的はおみくじです。
ここのおみくじ、普通と少し違います。ただ自分でひくのではなく、年齢を申告すると神職がその人のためにおみくじを引き、ご祈祷してくれるというもの。
つまり運を引くというよりは、自分だけに与えられる神意といえます。
このように、自分の数え年がわかる表があります。
自分の数え年を伝えると、神職の方が奥の方へ行き、割と大きな声で年齢を詠みながらご祈祷するので、周りの人に自分の年齢がバレバレです(笑)
私はあまり気にしませんが、女性なら気にする方もいるかもしれませんね。
しかし恥ずかしがらず、このおみくじは是非頂いて欲しいものです。
ここにある文言は、神々の物語にちなんだ和歌に神意が表されているため、その意味を汲み取るのはとても難しいのですが、何度も読み返していると、次第に理解できてきます。
よく考えながら読んだせいか、心に沁みました。。。
尚、子供用にはもっと簡単に書かれたものもあるそうです。
こちらのおみくじは木などに結んで残さずに、「一年間の指標として持ち帰りましょう」とあります。
もちろん私もそのお言葉に従い、持ち帰り、いまも読み返しています。
おみくじの他に自分用に御守りも。
開運龍水晶御守。
「この御守り、戸隠神社神域の圧倒的パワーが注入祈願されているんですって!」
外国人夫にそう説明したところ、、、
「これ以上パワーアップしなくていいです。。。」
そう複雑な顔。。。
私としてはここ数年勢いが衰えているのを自覚しているのですが、まだまだ表向には元気に見えるようです(笑)
帰り道
朝一で予定していた奥社、九頭龍社の参拝を無事に終え、次に目指すはお蕎麦屋さんです!
また元来た道を帰ります。
行きの登り坂はなかなかハードでしたが、下りは楽々です。
おみくじにも大変良いことが書かれていたので気分も上々。
この後は、お楽しみのお蕎麦屋さんが待っています!
奥社へ向かう途中は心を無に、額に汗して懸命に歩みを進めた私ですが、そんな慎しみ深き私は何処に???
帰りはどうしたわけか、気分は『もののけ姫』です。
山の中にポツンと一人でいると、まるで山犬に育てられた「サン」にでもなったような気分です!
「山犬は何処におる!」
「アシタカ!ヤックに乗せて私を蕎麦屋まで連れておいき!」
などという、おかしな妄想が頭の中に広がってきたのでした。もう邪念どころではありません。
しかし、そんな妄想に真面目に酔いしれることができるほどに、そこにある自然は現実離れしているように感じたのでした。
さすがに最後には正気に戻り、あまりのバカバカしさに、一人で笑ってしまいました(笑)
山道で一人ケラケラ笑いながら歩いてる中年女。気持ち悪いです。
誰もいなくてよかった。。。
しかし、随神門へ戻る頃には、人も多少は多くなってきたようです。これから奥社へ向かう人達のようですが、チラホラとすれ違う人が増えていきました。
再び朱塗りの随神門を抜け、また来た道を歩き、奥社入口まで戻る道すがら、向かいから歩いてきた若い男の子のグループが突然立ち止まりました。
なにかしら?と思ったら、熊を目撃したというではありませんか⁉︎
もしや、あの看板にあった熊なのか⁉︎
「大きかった?」
「そこそこ」
「黒かった?」
「はい。真っ黒でした」
「怖い!私一人なの!一緒にもどって!」
などと無理なお願いをしましたが、当然のことながら一笑に付されたものの、今時の若者は優しいです。
「僕たちはこれから奥社へ向かうので、あわてて転ばないよう、気をつけて戻ってくださいね」
そう爽やかな言葉をかけてくれたのでした。
ああ、これもご利益の一つだわ。うふ。
そんな些細なことに気分を良くし、熊への恐怖は脇に追いやることができました。そのお陰か、奥社入口に到着したのは10時前。
それでも2時間近くは歩き続けてきたことになります。さすがに疲れました。
幸いなことに中社へ向かうバスも10分ほどで到着するというグッドタイミングです。
しばしバス停に腰掛けて、バスを待ちます。
バスはこのパーキングの端にあります。
近隣にはちょっと時間を潰せる場所もあります。
ほどなくすると、ほぼ定刻通りにバスがやってきたので、「戸隠高原フリーきっぷ」を手にバスに乗り込みました。
そして5分もかからず目的の中社大門前に到着。
ここまでは予定通り、なかなかよい調子。
この後、お蕎麦屋さんで美味しいブランチを頂き、戸隠神社残り三社を巡ったのでした。。。
③につづく。。。