昔々、築地に『御菓子司ちとせ』という宮内庁御用達の老舗和菓子店がありました。
かのゴルバチョフ夫人もご贔屓にしていたというお店で、私の記憶している限り、上生菓子などの並ぶお上品な和菓子屋さんでした。
そんな和菓子屋さんで、当時珍しくもシュークリームを販売していたのです。
なにぶん30年近くも昔の話なので、本当に確かな記憶ではないのですが、和菓子を販売する店舗のすぐそばに別の店舗を構えて販売していたという記憶があります。
元々和菓子屋さんの方で和菓子を楽しんでいたのですが、職場の先輩にそのシュークリームを教えてもらってからというもの、すっかりそのシュークリームの美味しさの虜になってしまったのです。
そんな『ちとせ』さんも、ご無沙汰しているうちにいつしか姿を消してしまっていました。
後に調べてみたところ、平成10に廃業となっていたようです。
ところが、昨年末に新宿のルミネで『築地ちとせ』という看板を見て、ふと「もしかして、あのちとせさん?」と頭を過ぎりました。
並んでいる商品のイメージがまったく違っていたので、これまで気づかずに素通りしていたようです。
お店の前で商品を眺めていると、店員さんが試食を勧めてくれました。
頂いてみると。。。
「わぁぁぁ!これは美味しい!」と、あまりにリアクションが派手だったせいか、「こちらもどうぞ!」「こちらも美味しいですよ!」と、並んでいたお菓子をお味見させていただいたのですが、これがどれも美味しくて一つに決めかね、結局少量ずつ全種類お持ち帰りしてきました。
天ぷらせんべい
薄めのおせんべいが一枚一枚個別包装になっています。
天然の海老をたっぷり使用しているというだけに海老の風味が前面に出てきますが、他にも岩津ネギをはじめ、玉ねぎやわかめなど5種類の材料をミックスしたかき揚げなので、食べているうちに色んなお味に変化します。揚げ油の旨味もたっぷりです。
サクサクとした軽い歯応えは、お年寄りや小さなお子さんでも楽しめます。
そのまま食べるのもよし、またお茶漬けのトッピングにしたり、お蕎麦に乗せたり、アレンジして食べてもなかなかです。
賞味期限は60日。これだけあれば、お土産などにも対応できますね。
のり天せんべい
こちらは海苔の天ぷらせんべいです。
天然の海老に江戸前海苔と四国産のすじ青海苔がたっぷり練り込まれています。
海苔の香り、そしてその後ろにほのかに海老の風味が隠れていて、食べているうちに二つが混ざり合って、かき揚げの天ぷらせんべいとはまた違った味わいになります。
海苔と海老と塩(赤穂の塩)の旨味が相まって、これもまた美味!
こちらも消費期限は60日です。
泥つきごぼう天せんべい
こにらはサクサクとした天ぷらせんべいとは違い、しっかりとした歯応えのある一口サイズの細長いおせんべいです。
国産のもち米とうるち米、そしてささがきゴボウをサクッと揚げたおせんべいで、ごぼうの香りが濃厚です。
わずかな塩味とごぼうの風味が後引く美味しさです。
賞味期限はたっぷり120日あります。
『築地ちとせ』のいま
お買い物をしながら店員さんにお話を聞いたところ、やはり築地にあったあの『ちとせ』さんでした。
経営が変わったそうで、今はかつてあった店舗はなくなったといいます。
シュークリームについても尋ねてみましたが、店員さんの方が「そんなのあったんですか⁉︎」とびっくりしていました。
とてもお若い方々だったので、その当時は生まれてもいません。知らなくてあたりまえよね。。。そう思いましたが、その店の歴史が途絶えてしまったような寂しさを憶えました。
昨今では暖簾を下ろす菓子屋さんが増えています。時代の流れや景気の冷え込み、後継者問題と原因は色々ありますが、良いものを作り続けてきたお店がなくなってしまうのは本当に残念なことです。
この『築地ちとせ』さんもルミネ店は新年早々に閉店となり、残すは羽田空港店のみです。
きっと、私のように現在の『築地ちとせ』さんが、あの『御菓子司ちとせ』さんだと知らない方も多いでしょう。
作っているお菓子は違いますが、新しい『築地ちとせ』さんの天ぷらせんべいもすごく美味しくてリピート確実です。
懐かしさにひかれて足を止めたおかげで、新たな美味しいものに出会えました。
なかなか羽田空港へ出向くこともありませんが、通販もあるので是非利用してみようと思っています。