上野へ行ったときには必ず寄る店があります。上野駅グランドコンコースにある『のもの』です。
こちらは主に東日本エリアの食を扱う地産品ショップで、お菓子からグルメまで様々なものが揃っています。
もうそれだけで楽しいお買い物ができるお店なのですが、ここではあの『ペリカン』のパンを買うことができるのです。
『ペリカン』といえば、古くから下町界隈では有名なパン屋さん。
食パンとロールパンのみ販売という、ちょっとこだわりのお店で、今ではかなり知られたパン屋さんとなっています。
先日、所用で上野へ出向いた際、17時頃に『のもの』へ寄ってみると、『ペリカン』のパンがたくさん並んでいました。
店頭に出るのが15時半か16時頃だったと思うのですが、普段なら行列ができていて、あっという間に売り切れてしまうので、横目で眺めているだけでした。
ところが今回は並んでいる人もなく、パンも山型パン以外はたくさんありました。
これもコロナの影響なのでしょうか。。。
それなら!と、ものすごく久しぶりにお持ち帰りすることにしました。
『ペリカン』のパンに関しては、ちょっと思い入れがあるので。。。
『ペリカン』の思い出
子供の頃、今は亡き父とよく喫茶店へモーニンを食べに行っていました。
ただのトーストにサラダとコーヒーだけというような、子供にとってはあまり面白くない朝食ですが、「モーニングを食べる」という行為が割と気に入っていました。
その頃からでしょうか、父が『ペリカン』のパンを買ってくるようになったのは。
これが父の『第1次ペリカン熱』でした。
ついでにサイフォンまで買ってきて、朝から自分でコーヒーを淹れ、『ペリカン』のパンと共に食べることにハマっていたようです(笑)
当時としては珍しく、丸々1本の食パンを、自分の好きな厚さに切って食べられるのが気に入っていたのです。
この「ペリカン熱」は、完全に消えることなく、細く長くゆるゆると続いていきました。。。
その後、私が成人して海外へ出て、戻ってきたと思ったら、外国人と結婚することになったとき、父が買ってきたのがまたしても『ペリカン』のパンでした。
これが「第2次ペリカン熱」です。
「外国人はお米ではなくパンだ!好きなだけ食べさせてあげなさい」
そう言って、また食パンと沢山のロールパンを買ってくるようになりました。。。
「外国人」というワードがガソリンを注ぎ込んだように、再び「ペリカン」という炎を燃え上がらせたようです。。。
それから数年、子供が生まれると、「第3次ペリカン熱」の到来。。。
ここでも「外国人」というワードが着火点になりました。
「外国人の遺伝子があるのだから、子供達もパンは好きなはずだ。たくさく食べさせてあげなさい」
そう言って、今度は家族4人分として大量のパンが我が家に送り込まれてきたのです。
なんとも安直だなと思いながらも、今から考えれば父の愛情をひしひしと感じます。
何かというと、『ペリカン』のパンを抱えて訪ねてきた父の姿を思い出すと、とても寂しい気持ちになり、いまだに涙が出ます。。。
私にとって、『ペリカン』のパンとはそんな父との思い出が詰まったパンなのです。
時代を先取り⁉︎
今では割とよく見かけますが、昔は食パンとロールパンだけというパン屋さんは非常に珍しいものでした。
当時は子供心に「これしかないの?」などと思っていましたが、この特化型という形態は時代の何歩も先をいっていたということになります。
今では全国区で知られるようになり、カフェまでできたという有名なパン屋さんになりました。
かれこれ10年以上前、父が亡くなった際に田原町の仏壇屋へ行ったことがありました。
「そういえば、近くにペリカンがあった」と、お店に寄ったことがありましたが、そのときは行列はありませんでした。
しかし、少し前に蔵前へ出る用事があり、たまたま前を通ると、たくさんの人が並んでいて、初めて『ペリカン』人気を知りました。
パンといえば外国人夫の好みで、最近はブランジェリーのハード系が多かったので、日本の美味しいパンにはうといのです。
ふんわり高級食パンでさえ、最近初めて食べたというくらい出遅れているので、あの『ペリカン』がそこまで有名になっているとは知らなかったのです。。。
時代が『ペリカン』に追いついたか⁉︎
そんなところでしょうか(笑)
「のもの」の『ペリカン』
こちらでは、一人2個までという個数制限がありました。
販売されているのは食パン1斤、2斤、ロールパンは中ロールに小ロール。
食感の記載がある紙には「山型パン」もありましたが、品物は売り切れてしまったのか、店頭にはありませんでした。
一人2個までなので、食パンとロールパンを1袋ずつお持ち帰りしてきました。
食パン〈1斤〉
1斤 ¥430(税込)
食パンは1斤、2斤(税込¥860)サイズとありますが、通常の食パンのように長さの違いではなく、こちらは長さは同じで太さが違いました。
私がかつて食べていたのは、3斤ほどもあろうかという大きなものでしたが、こちらにはありませんでした。
2斤に比べると、1斤の方が細めで小さく見えます。
1斤はもちもち、2斤はふんわり、山型はサックリと味わいは異なります。
もちもちタイプはずっしり重量感があります。
触った感じもムチムチとしています。
厚めにスライスした方が、よりもちもちとした食感が感じられます。
生地目もしっかりと詰まっています。
私のスタンダードは、やっぱりバタートーストです。
しっかりと焼いて、外側サックサック、中はもっちりという最高の食感です。
中ロール
5個入 ¥520(税込)
ロールパンはパンのサイズが大きなものと小さなものと2種類あります。
こちら中ロールは大きい方で5個入り。通常のロールパンよりもひと回り大きめなので、なかなか食べ応えがあります。
しっとりというよりは、しっかりとした生地のパンです。特になにがというわけではないのですが、素朴な感じがいいのですよね。
食パン同様に目がみっちりと詰まっています。
このパンはシンプルな味わいなので、サンドイッチのように具材を挟んで食べても美味しいのです。
というか、私はむしろそちらの方が好きです。
今回、子供のお弁当にもしてみました。
玉子ときゅうり、野菜とスパムを挟んでみましたが、具材にパンのボリュームが負けていません。
これでお腹いっぱいになったそうです。
素朴で飽きのこない味
今時の「高級食パン」のようなふわふわで甘いパンもおやつ感覚で食べるには美味しいですが、やはり食べ慣れているせいでしょうか、私にとっては日本人としての「お食事パン」といえば、こうした弾力のある小麦粉万歳!といった素朴なパンです。
なんだかパンのご紹介というよりは、思い出話になってしまいましたが、久しぶりの『ペリカン』は、いい意味で本当に普通のパンだなと再確認しました。
奇をてらったところのない、素朴で懐かしい味わいは、お米のように毎日食べても飽きのこない美味しさです。
思い出という隠し味もありで、とても美味しく、そして懐かしくいただきました。
外国人夫も覚えていて、
「おー!ペリカン!義父さんがよく持ってきてくれたなぁ」
そう言って、懐かしそうに食べていました。
また出会った際には、思い出の味を持ち帰るつもりです。何度でも。。。