エンニオ・モリコーネといえば映画音楽のマエストロとして有名なお方で、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』などで知られるイタリアの作曲家です。
名前は知らずとも、音楽を聴けば「ああ、これ!」と知っている人も多いはずです。
もう90歳にもなるお爺ちゃんですが、その世界観は昔から昨年リタイアするまで、一貫して変わることなく、美しい音楽を生み出してきたまさに天才です。
私はモリコーネを神様から特別な役割を与えられた稀有な人であると思っています。
モリコーネを愛聴するようになったのは、チェリストのヨーヨーマがきっかけでした。
昔、私がまだ若い頃、代官山にあるラウンジバーのBGMでよく流れていたのが、ヨーヨーマの『リベルタンゴ』というアルバムでした。
それはアルゼンチンの作曲家であり、バンドネオン奏者でもあるピアソラとの共演という異色のアルバムで、クラッシックとタンゴが出会ったなんとも魅力的な音楽でした。
それ以上にヨーヨーマのチョロの音に魅せられてしまったのです。
以来、ヨーヨーマを聴くようになったのですが、今から十数年前にそのヨーヨーマがエンニオ・モリコーネとコラボしたアルバムを出したのです。
かねてからモリコーネの作る音楽が好きだったこともあり、それはそれは胸躍るような気持ちになったものです。
しかし、当時私は南半球の田舎町で暮らしていて、街の小さなCDショップでは見つけることができませんでした。
なんとかお取り寄せをお願いし、ようやくそのCDを聴いたのは1ヶ月以上も後のことでした。
あの時の喜びは忘れません。
聴き始めてすぐに、
「一生の宝を見つけた!」
そう思ったほどです。
それが『yoyoma plays Ennio Morricone』というアルバムです。
特にこの映画『ミッション』のテーマソングとも言える「ガブリエルのオーボエ」は、疲れた心に沁みます。
この素敵な音楽が天才チェリストのヨーヨーマが奏でる包容力のある優しいチョロの音色と溶け合うと、心はもう天国で身体中の力が抜けていくような感覚にとらわれるのです。
[Yo-Yo Ma plays Ennio Morricone]Gabriel's Oboe and The Falls
これは、私の中では究極の癒しミュージックとして、いまだに愛聴しているものです。
「大丈夫!」「明日があるわよ!」と叱咤激励するのではなく、そっと悲しみや寂しさに寄り添うような音楽は、時にどんな言葉よりも冷え切った心を温めてくれます。
これまで、その静かな美しさにどれだけ心を癒されてきたことか。
なにかを諦めなければいけないとき、
失ってしまったものを思うとき、
こんな私でもやる瀬無い気持ちになることがあります。
そんな時はいつもこの音楽を聴いています。
言葉はなくてもこの美しいインストルメンタルを聴いていると、自分の人生そのものが美しいもののように思えてくるから不思議です。
音楽の持つ力って、本当に素晴らしいものです。